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株式会社愛幸(岐阜県羽島市)

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株式会社愛幸
(岐阜県羽島市)

【写真】福元さん、三山さん 株式会社愛幸(あいさち)は2006年(平成18年)創業。主に自動車や半導体の生産に関わる自動制御装置、自動機の設計・製作・施工などを行っている。
社員数は40名(2025年5月現在)。
今回は、代表取締役社長の福元政雄さん、管理部部長の三山幸恵さんからお話を伺った。

外部機関のストレスチェックサービスを活用し、WEBでいつでもどこでも受検できるため、国内・海外出張者を含め社員全員が受検している。また、社員が相談しやすい環境を社内外に整備している。

最初に、健康経営やストレスチェックの取組み、相談しやすい環境づくりについてお話を伺った。

【写真】勤務エリア ポジティブに働き続けられるように、メンタルヘルス面から健康経営に取り組んでいます 「健康経営に取り組み始めたのは、2022年からです。長年お付き合いのある会社の社長から“健康経営優良法人認定制度”について話を聞く機会があり、申請項目を確認したところすでに当社が取り組んでいるものがほとんどだったため、申請してみることにしました。2023年3月に、初回の申請で認定を受けることができました。」

「申請に向けて当社の取組みを再確認する中で、申請項目の中に、“50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施”や、“メンタルヘルス不調者への対応に対する取り組み”などが含まれていることから、メンタルヘルスの重要性をあらためて理解しました。当社は、社員の平均年齢が30 歳と若いこともあり、身体の健康について目立った課題は今のところありませんが、心の健康も維持していけるよう、ストレスを抱え続けることなく、ポジティブに働けるような取組みを進めています。」

ストレスチェックはWEBでいつでもどこでも受けられるため、過去2年間すべての社員が受検しています 「健康経営として取組みはじめたことをきっかけに、外部機関のサービスを活用してストレスチェックを2023年6月頃に初めて実施しました。実施者などストレスチェックに必要な専門家も含めて外部機関に委託しています。当社は国内・海外出張者も多いのですが、WEBでいつでもどこでも受検できるため、過去2年間、社員全員が受検しています。高ストレス者は若干名いますが、医師による面接指導の希望には至っていません。しかしながら、当社が契約している健康経営サービスの電話相談窓口を利用しているようでした。社員にとっても、ストレスチェックにより自身の心の状態を知ることができるのは良い機会になっているようです。」

上司と部下との1on1ミーティングや社長面談などを通じて、上司や同僚などに相談しやすい関係性を築いています 「何かあれば、まずは直属の上司や同僚に相談するよう社員には伝えています。それが難しい場合は、私(福元さん)や総務部門で話を聴くことにしてます。上司と部下とは、適宜、1on1ミーティングを行い、話しやすい関係づくりをしています。また、年に1回、社長面談も実施しており、社員が食べたい物やお店を選び、一緒に食べながら面談をするなど、話しやすい雰囲気となるような工夫もしています。その他、近くの畑で、勤務時間中に、年に1回、社員が野菜の収穫をし、バーベキューをする機会もあり、話しやすい関係づくりにつながっています。汗をかくことで身体の健康を促し、自然に触れることで心の健康を促し、収穫したものをその場で食べさせていただき感謝する、という意義のあるイベントにもなっています。」

「日頃からの声かけなどを通じて、気になる社員からは、私(福元さん)が個別にじっくり話を聴くようにしています。就業上の措置の必要があれば、仕事量の調整や、客先変更、配置転換など、社員一人ひとりに合った対応をするように心がけています。」

働きやすいオフィス環境を整備したことで、コミュニケーション活性化、ストレスの軽減につながっている。

次に、働きやすい環境の整備や、働き方改善の取組みについてお話を伺った。

【写真】カフェエリア 社員それぞれが自由に働き方を選ぶことができる主体性を尊重したオフィスを作りました 「2022年に会社移転をした際に、社員の想いを取り入れたオフィス環境を作ることに取り組みました。社員が、その日の気分や仕事内容によって働く場所を自由に選ぶことができる、社員の主体性を尊重したオフィスです。観葉植物に囲まれた音楽の流れるカフェエリア、グループでの仕事が可能なミーティングエリアなどでは、自然と会話が生まれ、コミュニケーションの活性化につながっています。また、一人で集中したい時には、私語厳禁の集中ルーム、少し休みたい時には、仮眠室も設置しています。」

「オフィス環境を整備し、雑談や相談のしやすさなどコミュニケーションが活性化したことで、ストレスを抱える前のガス抜きができているように感じます。多様な働き方を実現できるオフィス環境は、ストレスの軽減や心の健康維持に貢献していると考えています。」

【写真】集中ルーム 運動推奨のサポートや有給休暇取得推進の風土づくりなど、働き方改善のための様々な取組みを実施しています 「年に1回、社員全員が集まる日には、健康に関するセミナーを行っています。また、運動推奨のため、社員が利用するスポーツジムやヨガなどの費用に対して補助金を支給しています。現在、4~5人が利用しています。その他、若い社員からの要望が多かったこともあり、1~2年に1回、会社負担・勤務時間扱いで社員旅行を実施しています。業務上、社員全員がそろうことは難しいので、別日程でも参加できるようにしています。」

「年間休日数は、以前は105日でしたが、毎年少しずつ増やしていき、今年(2025年)6月からは、125日となりました。業界的に休日や大型連休などに仕事が発生するケースもありますが、その分の振替休日を必ず取得する制度になっています。また、事業年度初めに、有休取得予定を事前に計画し、有休消化しやすい風土づくりをおこなっています。その結果、直近の有休取得率は94%でした。完全フレックスタイム制度も導入し、休みを取りやすくしています。」

毎日の全体朝礼時に“感謝の時間”を設け、感謝する習慣を身に着けてきたことで、社員の心持ちがポジティブに変化している。

最後に創業からこれまでの経緯と、その中で得られた様々な経験やその後の取組みについてお話を伺った。

“入社して良かったと思える会社にしたい”という想いで、社員との対話や取組みを進めています 「2006年の創業以来、電気事業を通して、お客様のニーズに応え、地域社会の発展のために取り組んできました。創業当初は苦難の連続でした。2008年のリーマンショックもあり、本業だけでは難しく、新規事業に取組んだこともありました。社員が8人まで増えたこともありましたが、業績不振から2012年には私(福元さん)1人だけになってしまいました。挫折と孤独を経験し、そこから再スタートして半年ほど経った頃に、1人入社することになりました。当時の我が社に入社してくれたこと、そして社員が普通に仕事をしてくれることが、とてもありがたいことだと実感しました。それからは、社員が“入社して良かったと思える会社にしたい”という想いが強くなり、社員のためにこの会社を良くしたいと考えるようになりました。」

「当社のような小規模企業において、社員の新規採用はとても厳しいです。当社に採用面接を受けにくる若者の中には、不採用が続いている方や、心に傷を負っている方もいますので、まずはじっくり話を聴くことを意識しています。採用後も、特に1年目の社員に対しては、話を聴く時間を多く設け、『話してくれてありがとう』という気持ちで対応しています。数年前に産業カウンセラー養成講座を受講し、対話と傾聴が大切であるということを学びましたので、日々実践しています。」

毎朝、全体清掃と「感謝をする時間」の習慣がメンタルヘルス向上につながっていると考えています 「毎朝、始業開始から10分間、社員全員で全体清掃を行っています。自分たちのオフィス環境を自分たちで整えることを通して、社員それぞれの心を磨く時間としています。また、清掃後に行われる全体朝礼の最初に“感謝の時間”を設けています。目を瞑り10秒間、感謝をする時間としています。感謝の対象は各自自由です。“感謝すること”がメンタルヘルスの向上につながると考えており、感謝する習慣を身に着けてほしいという願いで実施しています。多くの社員が元気に、心持ちがポジティブになってきたように感じられ、習慣の大切さを実感しています。」

様々な取組みを通じて、離職率は15%から3%まで減りました 「これらの取組みを通じて、5年程前は離職率が15%でしたが、最近は3%まで減りました。また、新規採用に関しても、職場実習を多く受け入れたことで、職業訓練校や技術系高校などからの応募が増えてきました。最近は、有料媒体での採用広告を出す必要もなくなり、採用コストの低減にもつながっています。社員が地元で長く働き続けることができるよう、健康経営の取組みをより強化していきたいと考えています。」

【取材協力】株式会社愛幸
(2025年8月掲載)